スマホを触ってしまうのは意志が弱いからではありません。我慢ではなく環境の側を変える、今日から実行できる7つの対策をまとめました。
「勉強中にスマホを見ないようにしよう」と決意したのに、気づけば30分スクロールしていた。この経験を意志の弱さのせいにしている人は多いですが、前提から見直す必要があります。スマホの中のアプリは、通知の音、赤いバッジ、引っ張って更新する操作、終わりのないフィードといった仕掛けを通じて、できるだけ長く画面を見続けてもらえるように専門のチームが作り込んだものです。素の意志力でこれに毎回勝とうとするのは、そもそも分の悪い勝負です。
我慢に頼る方法のもう一つの問題は、消耗戦になることです。「見ない」と判断するたびに小さな意志力を使うため、1日に何十回もその判断を繰り返していると、夕方には抵抗する力が残っていません。勉強を始める前の決意が固くても、疲れてきた頃に一度触ってしまえば、そこから先はずるずると崩れていきます。
典型的な失敗パターンが、「今日から絶対に触らない」と宣言してSNSアプリを全部消す、いわゆるゼロヒャク方式です。数日は持ちますが、連絡や調べ物でどうしても必要になった瞬間に再インストールし、反動でむしろ利用時間が増えて自己嫌悪に陥る、という流れをたどりがちです。
この記事で紹介するのは、我慢の量を増やす方法ではなく、我慢がそもそも要らなくなるように環境の側を変える方法です。具体的には、(1)物理的に距離を置く、(2)通知を仕分ける、(3)ホーム画面から入り口を遠ざける、(4)グレースケールなどで摩擦を足す、(5)スマホを使う勉強と使わない勉強を分ける、(6)時間で区切る、(7)画面を見ない休憩に切り替える、の7つです。順番に見ていきます。
取りかかる前に、現状を一度だけ数字で確認しておくことをおすすめします。スクリーンタイムやデジタルウェルビーイングの画面を開けば、1日の合計使用時間と、スマホを持ち上げた回数が見られます。多くの人は、自分の想像より一回り大きい数字に驚くはずです。ただし、この数字は自分を責めるための材料ではありません。これから作る環境が効いているかどうかを後で見比べるための、基準値として控えておくものです。
7つの中で最も効果が大きく、しかも今日すぐ実行できるのが、物理的な距離です。勉強を始める前に、スマホを別の部屋の充電器に置いてくる。これだけで、勉強中の中断は目に見えて減ります。触りたくなっても、立ち上がって隣の部屋まで歩くという数十秒のコストが挟まるため、無意識のうちに手が伸びるという最も頻度の高いパターンがほぼ消えるからです。
ここで重要なのは、電源を切って机の上に裏返して置く、ではまだ足りないという点です。スマホは画面が消えていても、視界の隅に存在しているだけで「通知が来ていないか」という考えを呼び込み、注意の一部を持っていきます。スマホが同じ部屋にあるだけで目の前の課題に使える認知的な資源が減ることを示唆する研究も報告されており、「触らなければ大丈夫」という感覚はあてになりません。
別室に置けない環境なら、カバンの奥やファスナー付きのポーチ、机の引き出しでも構いません。条件は2つで、視界に入らないことと、座ったまま手を伸ばすだけでは届かないことです。この2つを満たしていれば、自宅でも自習室でもカフェでも同じ効果が得られます。
距離を置くと決めたときに意外な抜け道になるのが、時間の確認です。「いま何時か見るだけ」とスマホを手に取り、ロック画面の通知が目に入って戻れなくなるパターンは非常に多いので、机には腕時計か置き時計を用意して、時間の確認をスマホから完全に切り離しておきます。数百円の時計1つで防げる事故としては、かなり割のいい投資です。
ありがちな失敗は、「調べ物に使うかもしれないから」と机の隅に置いておくことです。実際に調べ物をするのは1時間に数回でも、スマホはその間ずっと視界に居座り続けます。調べたいことが出てきたら紙にメモしておき、後述する「スマホを使う時間」にまとめて処理するほうが、トータルの集中時間は長くなります。
距離を置いても、休憩で手に取った瞬間に通知が20件たまっていれば、そこから20分が消えます。だからこそ、通知そのものを整理しておく必要があります。ただし「通知を全部切る」は現実的ではありません。家族からの連絡や仕事の呼び出しなど、本当に即時性が必要なものまで切ってしまうと、不安でかえってスマホを確認する回数が増えますし、大事な連絡を逃した経験を一度でもすると、翌週には全部元に戻すことになります。
おすすめは、通知を3種類に仕分けることです。第一に、即時性が必要なもの。電話と、家族や職場など特定の相手からのメッセージがここに入ります。第二に、あとでまとめて見ればよいもの。メール、ニュース、アプリのアップデート情報などです。第三に、そもそも受け取る必要がないもの。SNSの「おすすめ」や「いいね」の通知、ゲームのログインボーナス、ショッピングアプリのセール告知は、ほぼすべてここに入ります。
仕分けたら、第三のグループはアプリごとの設定で通知を完全にオフにします。第二のグループは音とバナーを止めてバッジだけ残すか、1日1回まとめて届く設定に変えます。音が鳴ってよいのは第一のグループだけです。作業としては、設定アプリの通知一覧を上から順に見直していくだけで、30分もあれば一通り終わります。一度やってしまえば、その後は何もしなくても毎日効き続けます。
仕分けが終わって、音が鳴るのは電話と家族のメッセージだけ、という状態になれば成功です。最初の2〜3日は「何か来ていないか」とそわそわするかもしれませんが、大事な連絡は音で届くとわかっているため、不安は思ったより早く消えます。残った通知の確認は、セット間の休憩や食後など、タイミングを決めてまとめて行う運用に切り替えてください。「いつでも確認できる」から「決めた時間に確認する」へ変わることが、この整理の本当の目的です。
さらに、iPhoneやAndroidの集中モード(おやすみモード)で「勉強」用のモードを作っておくと、勉強の時間帯だけ第一グループ以外を自動で遮断できます。時間割に合わせて自動で有効になるよう設定しておけば、毎回オンオフを操作する手間すら不要になります。
通知が来ていなくても、なんとなくスマホを開いてしまうことはあります。このとき次の行動を決めているのは、ホーム画面の1画面目に何が並んでいるかです。ロックを解除した指の先にSNSのアイコンがあれば、考えるより先にタップしています。逆に言えば、導線を数タップ分だけ遠くするだけで、「開こうとしている自分」に気づく余地が生まれます。
まず、SNSと動画アプリを1画面目から外します。2画面目以降のフォルダの中、それも2ページ目など、スワイプとタップを重ねないと届かない場所に移します。さらに一歩進めるなら、ホーム画面には置かず検索からしか開けない状態にするのも有効です。ホーム画面に残ったSNSのウィジェットも、常時視界に入る入り口として働くので外しておきます。開けなくするわけではなく、開くのに一手間かかるようにする。これだけで「無意識に開いていた」回数は大きく減ります。
もう一つ効くのが、画面のグレースケール化です。スマホの画面を白黒にすると、サムネイルや写真の魅力が一段落ちて、だらだら見続ける動機が弱まります。iPhoneならアクセシビリティのカラーフィルタで設定でき、ショートカット機能でワンタップの切り替えも作れます。Androidにも同様の設定やおやすみモード連動があります。常時白黒にする必要はなく、勉強の時間帯だけ切り替える運用で十分です。
スクリーンタイムなどのアプリ使用制限も、補助として役立ちます。制限の解除自体は数タップでできてしまうため「壁」としては頼りになりませんが、開こうとした瞬間に一度立ち止まらせる「ワンクッション」としては機能します。ここでの失敗パターンは、アプリを削除して入り口を完全に塞ごうとすることです。ブラウザ版で見るという抜け道がすぐ見つかるうえ、必要になって再インストールした時点で配置も設定も元通りになります。塞ぐのではなく摩擦を足すほうが、結果的に長続きします。
配置換えの効果は、感覚ではなく数字で確かめられます。スクリーンタイムやデジタルウェルビーイングの画面で、変更前1週間と変更後1週間のアプリ別使用時間を見比べてみてください。SNSの時間が数時間単位で減っていれば設計は機能していますし、減っていなければどの入り口が残っているかを特定する手がかりになります。減った時間が目に見えると、この環境を維持しようという動機にもなります。
ここまで読むと、スマホそのものが勉強の敵に見えてくるかもしれませんが、そうではありません。単語帳アプリでの暗記、わからない用語の検索、リスニング音源の再生、勉強時間の計測。スマホが最良の道具になる場面は、実際にたくさんあります。問題はスマホを使うことではなく、使う場面と使わない場面が混ざっていることです。参考書を読んでいる途中に「ちょっと調べるだけ」と手に取り、検索結果から通知に流れ、気づけばSNSにいる。これが典型的な事故の起き方です。
対策は、時間で区切ることです。たとえば90分の勉強なら、前半60分は紙のテキストと問題集だけでスマホは別室、後半30分を単語帳アプリと調べ物の時間にする、といった分け方です。前半で調べたいことが出てきたら紙にメモしておき、後半でまとめて調べます。実際にやってみると、その場で調べたかったことの半分ほどは、後で見返すと調べるまでもなかったと気づくはずです。
1日の流れに落とし込むと、たとえば平日の夜に2時間勉強するなら、19時から20時は問題集(スマホは別室)、10分休憩を挟んで、20時10分から40分までが単語帳アプリの時間、最後の50分は再びスマホなしで復習、といった組み方になります。大事なのは、スマホを使う枠が「いつ始まり、いつ終わるか」が事前に決まっていることです。枠の終わりが決まっていれば、単語帳アプリを閉じるタイミングを意志力で判断する必要がなくなります。
区切りの単位には、ポモドーロ・テクニックのセットをそのまま使うのも相性がよい方法です。「このセットはスマホなし」「次のセットは単語帳アプリ」とセット単位で決めておけば、その場その場で判断する必要がなくなります。スマホを使うセットの前には機内モードか集中モードをオンにしておくと、アプリを開いたついでに通知へ流れる事故も防げます。
なお、スマホは集中を妨げる要因の中で最大のものですが、唯一ではありません。机の上の視界、照明、疲労、タスクの曖昧さといった要因も含めた環境全体の整え方は、勉強に集中できない原因と環境のつくり方で詳しく扱っているので、あわせて読んでみてください。
最後の関門が休憩です。勉強中は距離を置けていても、「休憩の5分だけ」とSNSや動画を開いた瞬間に、それまでの設計が崩れます。5分で戻るつもりが30分になるのは、あなたの計画性の問題ではありません。フィードは次の1本、その次の1本と際限なく続くように作られており、「区切りがないもの」を意志の力で5分で切り上げること自体に無理があるのです。
しかも、SNSや動画は休憩としての回復効果が乏しいという問題もあります。休憩の目的は、次のセットに向けて脳を休ませることです。ところが画面から流れ込む情報は注意を使い続けさせるため、席に戻ったときには「休んだのに疲れている」状態になりがちです。
そこで、休憩は「画面を見ない5分」に置き換えます。立ち上がって伸びをする、水を飲みに行く、窓の外を眺める、机の上を軽く片付ける、ベランダに出て外の空気を吸う。どれも地味ですが、5分で自然に終わり、次のセットへの切り替えを妨げません。SNSをどうしても見たい日は、休憩に組み込むのではなく、その日の勉強がすべて終わった後の時間として枠を決めて取っておくほうが、勉強も休憩も崩れずに済みます。
休憩の長さにも目安を持っておくと崩れにくくなります。25分集中したら5分、45分から60分続けたら10分程度が一つの基準です。そして休憩にもタイマーをかけてください。「なんとなく休んで、なんとなく戻る」状態では休憩は延びる一方ですが、タイマーが鳴るという明確な合図があれば、机に戻るきっかけを毎回自分で作る必要がなくなります。
休憩中にスマホで勉強記録をつけている人は、記録を保存したらすぐ画面を伏せる、記録の時間帯だけ集中モードを維持する、といった一工夫を挟んでください。記録のついでにSNSを開くのが習慣になっているなら、記録手段そのものを見直す手もあります。手書きノートとアプリのどちらが自分に向くかは、勉強記録はアプリと手書きどちらがいいかで比較しています。
7つの対策をすべて一度に導入する必要はありません。意志力は日によって変動しますが、一度作った環境は毎日同じように効き続けます。まずはスマホを別室に置くという1つ目だけでも、今日の勉強から試してみてください。1週間続けたら、最初に控えておいた基準値と使用時間を見比べてみましょう。効果が数字で見えれば、次の対策に進む後押しになります。
MonoStudyのタイマーは開始も停止もワンタップ。余計な通知に気を取られない画面で集中時間を計測しながら、スマホから離れて勉強した時間が自動的に記録として積み上がっていきます。
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